4月、高2になった国下初子は不慮の事故で死んでしまう。霊になった自覚のない初子の前に現れたのは、何十年も自分の肉体を探して宙をさまよう岩井弦之丞の霊だった。「早く肉体に戻って生き返りなさい」という彼の忠告を聞かない初子は、霊のまま現世を浮遊して憧れの先輩への失恋を知る。
収録作品:
ローズティーセレモニー/きゃべつちょうちょ/ページワン/四月怪談/雛菊物語/桜時間/金髪の草原
短編集となってますが、どれもちょっと暗いテーマを扱ってるのにコメディも入ってる。読み応えのある一冊となってます。
「四月怪談」初子は命を失った事の重みも分からず、浮遊している間に好きだった人は別に好きな人がいることが分かってなかなか自分の体に戻ろうとしない。そこに肉体に戻れず成仏も出来ずにいる一人の男性、そして霊が見えるクラスメートに出会う。
生きたいって気持ちが戻るわけじゃないけど、初子も霊も初子の身体を使って相手を生き返らせたい。本当にギリギリまで迷ってる姿にハラハラするのだが、読んでいて実はこれは残された人達の思いなんじゃないか。亡くなったとしても実はまだ意識は近くにあって、その魂が肉体に戻れば生き返る、生き返って欲しいという、生きている側の祈りだったのかも。
結構コミカルに描かれてるけどシュール。
「桜時間」16歳の時に3ヶ月の間に3人の男性と付き合った、そうしたら子どもを授かった。おろす気になかった私はその事を告げると別れの手紙をもらい、そして4人目の男性がそれでもいいと言ってくれ、その人と結婚をしたが…。
子どもに誰に似たのか…なんて話はある話だがこの家族の場合は…。それを気にするのは母親だけだが、本当は誰の子だったのか、その父親である人はどんな人だったのか探しに出てしまう。
母親の不安とは別に男の子はすくすく、そして母を見る。そして旦那となった男性は。。
この設定が面白い。母親はオロオロするが、父親と子どもは自然だ。一緒に過ごしてきたその事が家族なのだから。見えないモノに振り回されるが母親の後ろめたさだったのか。
生と死を扱うものが多い中基本はコメディも入ってる。また頭で考えてる事が膨らみすぎて、現実の世界にも入り込んでいるというのが多いかも。頭でっかちになることもある。その苦しみから逃れるきっかけをくれてるのかな。。。