事件は、商産省組合の秘密闘争計画を筒抜けにしたスパイを発見した事が発端だった。スパイと目された組合員、そして彼の内縁の妻に誤認された女性が殺され、二つの事件の容疑者は事故で死亡する。ある週刊誌の記事から、事件に疑問を感じた警部補が挑むのは、鉄壁のアリバイと暗号、そして密室の謎。笹沢左保のデビュー作にして代表作となる傑作本格推理小説。 前半は事件と供述調書、後半は終わったと思われていたこの事件をもう一度一人の警部補が病欠として長期の休みを取り、そのあいだにこの事件を調べなおす…というもの。
前半を読むだけで事件としては終わってしまうのだが、その終わり方も身も蓋もない終わり方。それなのにそれを覆す「特別上申書」。動機・アリバイ・密室…など色んな要素が盛り込まれているし、なによりこのタイトルの意味も深い。犯人の執念と倉田警部補の執念がどちらも強く伝わってきて読み応えありました。
またもう一編、『青春飛行』というエッセイが収められてますが、これは笹沢氏が郵政省の東京地方簡易保険局というところで働き始めたころからのエピソードが書かれてるのですが…。
それは波乱万丈というか凄い青春を送ってみえたのかが分かります。
その保険局に勤めていた時に書かれた作品なので、この作品にもしっかり反映されてる部分がありました。このエッセイを読んで、また作品を見直すと、なるほど…というか面白さは増えますね。
350冊を越える作品を発表した笹沢氏のデビュー作。
そして、この執念を見せる倉田警部補は次の作品『霧に溶ける』でも出てるそうなので、読んでみたいと思います。
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10点