今回のターゲットは、英会話学校、旅行会社、自動車業界、そして出版社…。リストラ請負会社に勤めるクビ切り面接官・村上真介が、仕事の意味を、働く理由を問いかける。『小説新潮』掲載をまとめて書籍化。 『 君たちに明日はない』『借金取りの王子』に続く第三弾となります。
今回は4編になりますが、どれも良かったです。
「ビューティフル・ドリーマー」は、某英会話学校を彷彿とさせる職場が舞台。その中でターゲットになった女性は、変わった履歴を持っている。面接官村上と出会うことで、自身を見つめなおしていくのですが…。
ちょっと前に似たような出来事がありましたよね、多分そこから作られてると思うのですが、被害にあった人ではなくそこに勤めていた人たちも辞めざるを得ない…そこを狙った話なんですが、一ひねり二ひねりとあって面白かったです。
「やどかりの人生」
雑誌に載っていた時にこの話題があったかな?中途半端な営業しかせず、とうとうリストラの対象となってしまったサラリーマンの主人公。この人もちょっと変わった履歴を持っている、なのに何故長続きしないのか…。村上も「コイツ…」なんていうぐらい注目の主人公はラストにどでかい事をやってくれます。だから人生は面白いのか。どれも同じ人生はないのですが、どの人もドラマチックになるもんです。
「みんなの力」
独立系ディーラーのマスダに勤める主人公は、自社の車の整備について一切妥協をせず利益をもど換えしにしてしまう整備士だが、店舗統合の為遠くへ転勤かもしくは…という選択に迫られていた。
車を愛し決して無茶な整備はしない、それには理由があったのだが…。
辞めても転勤しても今自分についている顧客に迷惑が掛かるのは目に見えてるのだが…そこに現れたのが…。
真面目すぎるがゆえに苦しむ主人公。しかしこの場面にきて自分がどうして行きたいのがが見えたりする。真面目にやってさえいれば、きっとみんな見ていてくれる。なかなかカッコイイ話となっていてよかった。(これも聴いた事のある会社や車種が出てましたね)
「張り込み姫」
写真週刊誌の記者として女性として花の年齢をすべて仕事に費やしてきたが、その雑誌がとうとう廃刊となる…。やりがいを無くし、同僚や上司との関係もギクシャクするのだが。。
働きざかりの女性が、ハタと立ち止ったときに何が見えるのか。
忙しいかった中、自分がしたかった事がなにか見えてくる。
…どれもどっかで聞いたような話なので、とても現実的だし、その業種の内情も結構しっかり書かれているので、なるほど、こういう風にリストラの対象にされたりするんだ…と更にリアリティが増して感じられ、ついついのめりこんでしまう。
毎回そうなんですが、村上は、はっきり目標を決める〜というのではなくて、見つけるための一歩を出せるようにする…っていうのが良いですね。当たり前ですが無理強いなんてしません、がリストラ対象となって気付かされることは沢山あって、そこでどういう風な気持ちになれるか・それを自分で見つけることが大事になってくるんですよね。村上はそこまで考えてないかもしれませんが、自然と出来ちゃうんでしょうね。
なかなか暗くなるような題材ですが、読了感はとてもいいですよ。
村上の仕事の顔とオフの時とのギャップも良いですよね。主人公も脇役もしっかりしていて面白かったです。
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10点