家日和
ネットオークションにはまる専業主婦。会社が倒産し、主夫となる営業マン。夫と妻。ちょっとずれていて、でも愛情がないわけでなく…。ずっと外にいた夫の王国か。ずっと家にいた妻の城か。ビター&スウィートな「在宅」小説。
6編の短編集。在宅小説って何?と思ったら、主人公が日常の生活(家)で起こる事を描いた小説。短編ながらどれも面白い。
「ここが青山」
会社が倒産し、主夫になることにした主人公。代わりに妻が働きに出始めたが…。
暗い話と思ったらそうではない。むしろエンジョイしている。家庭内ではさほど問題にもならず快適なのだが、周りにはそうには映らない。
男性ならではの、ちょっとした拘り、大雑把な女性より主夫に向いてるんじゃないかな。
「家においでよ」
妻が出ていった後、家の中を趣味のものを一つ一つ吟味しながら揃えていく、それは独身時代に揃えたかったものだったりと、とても居心地のいい空間となっていた。
寂しくなった家の中で、お気に入りの家具を揃えることで寂しさを紛らわす…どころか妻の心配はしなくていいのか??って思ったけど、妻が出て行った理由もさほど大したものではなかったのかな。一人になって見えてくるものは、妻だけでなく友人達の本心や家庭だったりして。
「夫とカーテン」
カーテン屋をオープンさせるといって、既に会社を辞めてきた夫に呆れるプロのイラストレーターの妻。破天荒な夫にカリカリするのだが、そんな時こそいい作品が出来る。夫への怒りとインスピレーションは比例するのか。ただ困った人・と思っていたのが、自分の作品の出来に左右されてたと知ってから、夫の良いところも見えてくる。けれど、この妻だからこそ夫も自由気ままに出来るのかも。フフッと笑える夫婦です。
「麦と玄米御飯」
どの作家さんもそのような気がするけど、N木賞を獲ると某賞を獲った作家さんが主人公の物語を書かれてるような(気のせい?)。
某賞を獲り、家庭にもゆとりが持てるようになった妻は、パートを辞め近所に住むロハスにのめり込む夫婦に感化され、我が家にもロハスをガンガン取り入れ始めた。
作家の主人公は少しエスカレートし始める妻に困惑しながらも、そのロハスで被るストレスを小説にしたいと思ってしまう。。
きっと小説が行き詰ってしまうと、家庭の中でネタを探してしまうのかも。そんな心理がありつつ、暴走しそうな妻に困惑しながら態度では表せなかったりする、このうろたえっぷりが面白い。
毎度思うけど、女性の描き方やその呟きが、リアリティがあって面白い。
前に『マドンナ』という女性OLが主人公の短編が、実に女性が女性らしくてビックリしたけど、普通の主婦も描けるのにまたビックリ。
大した事件は起こらない、でもちょっとしたハプニングや、会話のネタになるぐらいの出来事が面白く描かれている。
とても楽しめた。
…奥田さんって結婚してたっけ??
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8点