気を失った25歳のサラリーマン・大森連は、介抱してくれた時次郎とさなの兄妹から今は天明6年だと告げられる。驚きながらも江戸時代を懸命に生き抜こうとする連に、さなは想いを寄せていく…。『野性時代』掲載を書籍化。
なんと時代小説作家さんのタイムトリップもの。
主人公・連は、休暇を利用してマウンテンバイクに乗り小旅行に出るのですが、その先で突然過去の時代に来てしまう…。
と、タイムトリップするまでは現代なんですよね。よくある家庭環境で大学を卒業したあと就職し彼女も出来たけれど振られてしまって…なんていうエピソードもあるのですが、物と情報、何より食に困らない生活のなかから、一転大飢饉にみまわれた時代。
そのなかで、とにかく助かって生きていること、助けてくれた人への感謝、そして村の復興のために、現代で知っている常識的な知識のみで全力に尽くそうとする。その反面、必ず現代に戻る事をあきらめずにいる連の真面目さと前向きさはとても魅力的です。
そのなかで、どうしてこのような時代に飛ばされてきたのか…なども触れられているのですが、理論的なものも少し書かれてるのですが、整合的にって言葉が良く使われていたのが印象的。
ちょっとネタバレが入るかもしれないので反転↓
なるべくしてなった、来るべきとしてこの時代に来た、ということなんでしょう。
豊かな時代で、周りの人と協力してやっていくなんてなかった連が、一致団結していかなければ生きていけない、その時代の想像を超える飢えへの厳しさなどが、今の人たちへの欠けてる部分を出してるようでした。
またラストの展開・・ああ、そうなるのか〜無事戻れるのかどうかだけしか見てませんでしたが、読み終えれば現代ものなのかな。
私は結構嬉しいラストなんですが、そう落ち着いちゃうの?と思う人もいるかも。まあ、この手の小説も書けるんだっていう驚きもあり、『ほら吹き茂平』のある短編とリンクしてる部分もあり、楽しめました。
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10点余談ですが…
宇江佐さんにはこのぐらいの年頃の息子さんがみえる…と記憶してたのですが、この主人公に息子さんの影を映してたのかな〜なんて思いながら読んでました。