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『ひどい感じ―父・井上光晴』 井上荒野 講談社

ひどい感じ―父・井上光晴
ひどい感じ―父・井上光晴

井上光晴さんという作家は知っていたけどどんな作品を書かれていたのかも知らなかった。だから井上荒野さんときいてもピンと来なかったが、有名な作家が父という、特別な環境で育ってきた荒野さん。
父の死後、父の自筆年譜に沿って生い立ちを調べるうちに、どうもその年譜は事実は違うことが多いことに気がつく。親戚の伯母さんも、父の死後になって語るようになった。そこには母も知らないこともあったり…。
小説家とは虚構を書き上げるのだが、自分自身も虚構の一部としてしまう…それが全身小説家・井上光晴なのでしょうか・・
荒野さんの幼い時の記憶から父との思い出や父の作品と照らし合わせたり、また荒野さんがその生い立ちを紐解くことで、改めて井上光晴の偉大さや凄さ、そして父をさらに尊敬することになる。
面白い父でユニークだったけど、家族を大事にしていたんだと、死後になって気付かされる。亡くなっても自身も小説家であり続けていることに驚きを感じ。この家族の暖かさを感じた。


この作品中に出てきた荒野さんの『もう切るわ』…これも早く読みたいな〜
2006.04.03 Monday 17:12 | comments(2) | trackbacks(0) | 

『ヌルイコイ』 井上荒野  光文社文庫

ヌルイコイ
ヌルイコイ

売れない童話作家の主人公は滅多に顔を合わさない夫に隠れて、売れっ子童話作家と不倫中。しかし身体だけの関係でコトが終わると相手はあからさまに冷たくなる。
冷たくされるのも、待たされるのにも慣れ、自分自身の存在価値さえなくし、そして医者に入院を勧められるほどの病気を患っていた。温度のない生活を送っていたなか銭湯のまえで自分より若そうな鳩に出会う…。

それほど華のあるような主人公でも鳩でもない。自分の病気を知り、残りの人生を考えた時の行動って??
こうしてやりたいと思ってたのか、最後に結構ズルイ行動に出ている。それも当然って感じだ。仕返しをしてやったりという、あんまり美しくない反撃。そんな関係になるのには主人公にも非がありそうなのに、それはないよな〜などと読了後すぐに思った。
しかし…。
美しくない、責任を相手に押し付けるように考えてしまうってよくある話ではないか??自分も悪いと思ってしまったら自分がなくなってしまう。淋しさを不倫相手に求め、なのに不倫相手にまで冷たくされ、それにさえ慣れっこになる侘しさ。そんな時に出会った鳩に興味を持つことは自然なのかな。
ラストの急展開は苦笑ものだが、盛り上がりがあるようなないような…タイトル通り?でもまあ面白かったです。

7点
2005.10.17 Monday 02:17 | comments(2) | trackbacks(3) | 

『しかたのない水』 井上荒野  新潮社

しかたのない水
しかたのない水

あるフィットネスクラブを舞台にした、短編6編。

いつも同じ時間に来る人、個性的な若者、通ううちに顔を覚えたりするが私生活はまったく分からない。。若者から年配まで、色んな人が同じ場所に集うフィットネスクラブに起こる人間模様。
短編ごとに主人公が変わるが、フィットネスクラブを通して繋がっている。

不特定多数の中にいる一人(主人公)の視点が面白い。
ここに登場する主人公達は、一癖も二癖もある人たち。だけど他の人からは変わった人とは思われてもそれまでのこと。
外で見せる表情と内に秘めたる気持ちの格差、ズルさや愚かさなどがストレートに書かれているので、楽しめるといった話ではない。だけど誰にでもあるその部分にとても惹きつけられる。外から見る印象と本人のギャップ。
一人一人に絞って見るととても個性的なのだが、それもフィットネスクラブの中では多数の中にまぎれてしまっているんだと思うとその違和感が面白く、そしてリアルでこわかった。

9点

WEB本の雑誌
2005.08.04 Thursday 20:37 | comments(2) | trackbacks(3) | 
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