雲を斬る
父の仇を探しに来た江戸で、寺子屋の師範をしながら、道場破りで日銭を稼ぐ由比三四郎。次々に舞い込む刺客と難題に、必殺剣法と優しさで乗り切るが…。江戸の町を舞台に、優しさと切なさの人間模様を描く時代小説。
初の時代小説ながら第12回中山義秀文学賞を受賞しているこの作品。
帯に『池永節まさに満開!』とあるが、腕っ節は強いが女に弱い、この女がまたワガママな娘で…。この手の話が得意というか、ひょっとしたら時代小説向きなのかな?
主人公三四郎のことが好きだけれど、いつもうやむやにかわされてしまうおさと、空を飛びたいと日々研究している隣人・巳之吉、いつも三四郎の話し相手となる寺の住職・快延という脇役達と、勝負を挑みに来る者たちなど、それぞれに個性がハッキリしているし、短編連作となっていて、とても読みやすく、三四郎が繰り出す父親直伝の『氷柱折り』という技が光ります。
また、巳之吉がなぜ飛ぶことに拘るのか…これにも惹かれます。
表紙のように清々しい物語です。
>9点