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2017.06.18 Sunday  | - | - | 

『悪人』 吉田 修一  朝日新聞社出版局

悪人
悪人

保険外交員の女が殺害され、捜査線上にある男の存在が浮かぶ。そして、その男と出会ったもう一人の女。なぜ事件は起きたのか? 加害者、被害者、その家族たち、1つの事件の背景にあるさまざまな関係者たちの感情を静かな筆致で描く。

なかなか厚い本でしたが、一気に読ませる勢いのある作品。
そして登場人物も結構多く出てくるが、どの人物もしっかりとしたキャラクターを持っていて、個々に個性と自分を持ちながらも周りの人間と共存している。ただ主人公達はその共存が上手くいかなかった〜という感じかな。

この小説は生活感がとってもあってリアリティがあるだけに、グッと引き込まれてしまう。主人公達は成人となっているけれど、まだ未熟な部分も多く、恋愛事に関しては突っ走ってしまう若さがある。それだけに間違いもあるのだけど。
桂子は自分には正直に生きてきたタイプ、祐一と光子は大人しく今まで自分を抑えて生きてきている。最後にはそれが弾けてしまったのかも…。

ラストは、かなり切ない。
光子はなんだか長い夢から醒めたような感じ、祐一は。。。?

最初にも書いたけれど、この作品は登場人物が多い。けれど、読みにくさより上手く主人公達を浮かび上げている。
切ない物語の中に主人公達それぞれに、ちゃんと声を掛け心配してくれる人が出てくる。社会の中の孤独を感じている若者達だけど、本当は社会の中で誰かに助けられ、そして守りたいものがある。
だからこそ善人や悪人となってしまうのかな〜。
容疑者Xの献身』に似た感覚…愛情表現の下手な祐一はこんな表現になってしまったのかな…ちょっと悲しいラストだけど、充分心に響く作品でした。

久々の…
10点
2007.07.20 Friday 10:07 | comments(6) | trackbacks(7) | 

『うりずん』  吉田 修一  光文社

うりずん
うりずん

気鋭の作家・吉田修一と写真家・佐内正史が初めてタッグを組んだ、掌編小説と写真のコラボレーション。
人生の光と影。その交叉するところにスポーツがある。ほろ苦い思い出、忘れられない情景を気鋭の作家と写真家が巧みに切り取った深く心に残る作品集。「VS.」連載に、書き下ろし「水底」を加えて単行本化。


前半を佐内正史氏が映し出す躍動的な写真が並び、後半は吉田修一氏が綴る短編となっている。
まずは写真、これがとても生き生きしていてポーズをとった写真ではなく生活やスポーツなどの瞬間を捉えたものばかり、全部カラーで、人物も背景の中の一部として写されてるので、風景の一部分・瞬間を捉えた、とても生き生きした写真ばかりだ。

後半は10編ほどの短編で主人公は、ちょっと前、もしくは子どものころの自分と今の自分を照らし合わせたような物語が多かった。
今の自分がよく見えてない、そんな自分が振り返ることにより、明日から一歩前進していこう…そういう励ます〜というと大げさだけど、それでも一歩歩き出すんだ〜という、読んでいて心地よかった。
どの写真とどの物語がコラボレーションしてるのか…判るような〜そうでないような(笑)。
多分吉田さんが写真からイメージして物語を作ったと思われるが、写真の一つ一つに物語を感じる。映る人物の現在過去をイメージしてみるのは面白い。
そして書かれてる登場人物は、吉田さん世代の人物が多く、共感することも多い。
物語に大事件や急展開はない。けれど小さな気付きから、変わることもある。
そんな生きていくうちの少しの変化をうまく捉えていて面白かった。

9点
2007.06.04 Monday 00:05 | comments(4) | trackbacks(3) | 

『初恋温泉』  吉田 修一  集英社

初恋温泉
初恋温泉

温泉をキーワードにした5編の短編集。
どれも温泉地に行くのだが、ちゃんと実在するモデルとした温泉があるようだ。
情景を描くのが上手い吉田さんにはピッタリの題材だと思う。

それぞれの話の展開も気になるけれど、離婚の危機となってきている夫婦が行く熱海の温泉、W不倫をしているカップルが向かう京都の温泉などシチュエーションにより行く温泉地も違ってくるんだろうな…なんて色々深読みもしたりして。。

読んでいて温泉地を紹介する旅番組やドラマを見ている感覚になる(笑)
実際自分が温泉に行きたいって思うときってどういう時なんだろう。また今まで行った温泉地を思い浮かべたり、また温泉に行きたい…って思わせる心地よさもある。

ひとつのテーマに沿っての短編というのは良くあるけれど、こういうのはちょっと珍しく紀行文的物語で面白い。
吉田さんには全国各地を回ってもらってその温泉地のある風景とドラマをもっと書いて欲しいな〜
〜〜なんて勝手に期待してしまいます。

9点
2006.10.01 Sunday 23:42 | comments(8) | trackbacks(8) | 

『ひなた』  吉田修一 光文社

ひなた
ひなた

春夏秋冬に分かれた章に、昔はヤンキ―をしてたが今春から有名ブランドの広報として入社した20代前半の女性新堂レイ、レイの同級生で彼氏だがまだ大学生の大路尚純、尚純の兄の妻でファッション雑誌の編集部に勤める大路桂子、尚純の兄で桂子の夫である銀行員の大路浩一の4人がそれぞれの目線で順番に描かれた物語が時間を繋いで書かれている。

夫(彼)や妻(彼女)としての一面…とは別に仕事人としての自分とそれとは別のプライベートの自分という部分をしっかり持っている4人。
しかし仲が良く話も良く判る家族やカップルという部分もありながら、決して相手には言わないし分かり合おうともしない部分を確実に持っている。
話を読み進めると表面的に仲が良いだけ、という薄っぺらい関係のように思えるのだが、決してそうではない。二面性があるわけでもないのに、もう一人の自分が居たりする。何故そんな自分が居るのかは、最後まで読めば伝わってくるはず。

女性として桂子の行動には賛成出来ない部分がある。
でも…妻として仕事人として家族としての彼女は完璧だしカッコイイ。だからこそたった一つイケナイ事もしてしまっている。これは私は好きでは無いが、彼女は人を嫌いになれないんだろうな、だからこそそんな部分が良い所で悪い所なんだろうな、なんて思う。

とっても淡々に描かれている割に人物像はとても良くて、どの人もいい人なんだろう。
スタイリッシュと言う言葉は合わないかもしれないが、それぞれがしっかり描かれていてとても独立した考え方を持っている。そんな人たちが集まればこんな感じになるのかもしれないと思わせる。
かっこいい物語ではないし、特別なこともきっと見た目的にはわからないのかもしれない。
でも静かに春夏秋冬が過ぎるなかで、大路家族が大きな転換期となっていく様子がとても自然に描かれている。尚純と浩一の両親もドラマを持っているのでそこも見どころとなっている。

好き嫌いは分かれそうな物語であると思うけど…。
私は結構好きである。

9点

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2006.02.05 Sunday 17:30 | comments(4) | trackbacks(1) | 

『7月24日通り』 吉田修一 新潮社

7月24日通り
7月24日通り

どちらかというと、男っぽくてドラマティックな話〈笑〉が多いと思っていた吉田さんだが、今回は女流作家が書いたような女性が主人公の恋愛小説。

もともとケータイ小説として発表されたこの作品は主人公小百合の日記のように読める。章ごとにちょっと変わったタイトルが付いているのはブログ日記風にも感じた(…のは私だけ??)。
小百合は特に目立つことも無いOL。自分が住む街をポルトガルのリスボンに見立て、日々の生活を送っている。勿論実際に行くわけでもなく、冒険は出来ないけど誰にも言わず楽しんでいる。空想の世界で、今の自分より綺麗で理想を行動を起こさずに求めている姿、心の中では思っていてもそれは空想の中・・・という女性を見事に描いている。
上司が学生時代の上級生だったなど、社会人になってからも学生時代の関係がズルズル引きずっていたり、また、いい人を知らない内に演じている小百合。女性にもてる弟を見ながら、周りに集まる女の子達を自分に合わせてみているあたりは、内向的な女性の気持ちがよく出てる。

間違ってるとわかっていても自分の気持ちに正直に行動する。。

うん・・・上手いなあ。
後半に出てくる警備員の男の子もいい味出している。。
シンプルで起伏の少ない展開だけど、心理描写が良かった。

9点

Yahoo!インタビュー
2005.03.21 Monday 21:22 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『春、バーニーズで』吉田修一 文藝春秋

春、バーニーズで
春、バーニーズで
春、バーニーズで

短編連作+短編1編。

「最後の息子」のラストから十年経ったところから始まる。。。

「春、バーニーズで」
『ぼく』だった主人公筒井が、かつて同棲していたことのあるオカマと偶然出会う。
あれから筒井はバツイチ女性瞳と連れ子と一緒に結婚していた。
この偶然の再会を、嫌な思い出ではなくしっかりとした過去として消化していて、いい思い出としていたのが良かった。主人公も閻魔ちゃんも、ちゃんと時が流れていて、新たな出会いをしていた。それが切なさや寂しさより安心していたのが嬉しかった。

他、筒井の日常の一片を切り取った、その部分だけビデオに撮ってあったかのような短編が3つ。
筒井と妻と4歳の息子と義母と暮らし、理想の家族と言われるようになったが、少しだけハメを外した空想をしてみたりする。
マクドナルドで相席した彼女と何もなくても想像を膨らましたり、同僚の結婚式に参列したあと夫婦と二人で悪いゲームをしたり。。

「パーキングエリア」
日常から逃げ出したかったのか?そんなに追い詰められていたわけでもなかった。でも、行き先を変えてしまった。。急に行動を起こしてしまった彼に妻は…?これもナカナカ良かった。

装丁が黒、中に数枚のモノクロ写真が印象的。

9点
2005.03.03 Thursday 22:56 | comments(0) | trackbacks(1) | 

『最後の息子』吉田修一 文春文庫

最後の息子
最後の息子

表題含む3編の中編集。

「最後の息子」〈デビュー作〉
オカマの閻魔ちゃんと同居する主人公。ビデオを日記代わりに撮ったりしながら、毎日自由気ままなヒモ生活をおくっている。そのビデオを再生しながらぼくは閻魔ちゃんとの生活を振り返っている。
同棲しながらも、恋人関係のようで実は一方的な愛情を注いでいた閻魔ちゃん。主人公の母親からの電話に答えた彼女?は主人公をどうやってみていたのか?
悶々としたヒモ生活、仲間の死、閻魔ちゃんからの手紙と、電話機のそばにあるメモから、主人公はこの堕落した生活から立ち直れるんだろうか?
大事なものは失わないと気付かないものかな。

「Water」
高校最後の夏、水泳部のキャプテンをつとめる主人公が最後の大会へ向けて競い合う仲間達との青春記。
記録やライバル達への闘争心、友情など、常に一生懸命な部分を前面に出していて清々しい。

私としては「Water」の方が好きだが、「最後の息子」の閻魔ちゃんも好きである。
「最後の息子」は『春、バーニーズで』へ続く。二人のその後を知りたい。

7点
2005.03.02 Wednesday 22:58 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『ランドマーク』 吉田修一  講談社

ランドマーク
ランドマーク

関東平野に地上35階建ての巨大スパイラルビルが建設されている。そのビルの設計者・犬飼と、ビルの内側で働く鉄筋工・隼人。この2人が交互に描かれている。
結婚4年目、仕事の為にホテルで生活しているが、妻の他に彼女がいても、その彼女にさえ刺激がないと感じ始める。また東北出身の作業員に囲まれた寮で毎日仕事場と寮を往復するだけの生活に嫌気が差し、自ら一目に付かない秘密を持ち、その秘密がバレるかバレないか、その緊張感を日々の刺激としていた。

お互い違う空間に居ながらも、スリリングな生活もやがてつまらなくなり、更に刺激を求めてしまう。その刺激もギリギリの所で。。
2人のギリギリの部分は違う。犬飼や隼人はその秘密を持つことで何が変わったのか。
2人の歪んでいく気持ちはスパイラルビルその物なんだろう。微妙なバランスで立つスパイラルビルは、そのバランスが崩れた時一気に弾けてしまいそうだ。そんな危険と隣り合わせの心の歪みが2人に書かれている。

情景描写が上手いし、出稼ぎで上京してきた作業員たちの様子などイメージがしやすいので話にリアリティがある。閉鎖的な環境が主人公2人を追い詰めていくところなどは心地悪さもしっかり伝わってくる。
決して気分のいいラストではないが、読了後も余韻を引きずる作品だった。

8点
2004.11.11 Thursday 17:22 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『長崎乱楽坂』 吉田修一 新潮社

長崎乱楽坂
長崎乱楽坂

6編の短編連作集。
夫をなくした千鶴が、子ども・駿と悠太を連れて地方の実家(三村家)に戻ってきた…。子ども達はその実家の「母屋」に集まる男達と「離れ」に入る母、地方での家系の繋がり、離れの謎、父の死についてや、母親の行動など、大人達の不思議な世界を、第三者的に見つめる。

1編ごとに時間が進み、駿は成長しながら、家族を静かに見つめる。
三村家には色んな人が出入りし、去っていくのに、いつも孤独に、その時その時感じ、編を追うごとにその気もちの変化・動きもリアルに書かれている。それは成長を喜ぶというより、切なさが募る方が多い。

最初は駿という少年の成長記だと思ったが、そうではなかったようだ。
「離れ」という場所の移り変わりを描いているような…。

最後はよく言えば余韻を残したような…悪く言えば中途半端なような…。

個人的にはその後を知りたい。幸せになっているのか、そうでないのか、駿の青春という時期を覗いていたのだ、だからその後も知りたい。

8点
2004.07.12 Monday 11:09 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『東京湾景』 吉田修一 新潮社

東京湾景
東京湾景

出会い系サイトで知り合った亮介と美緒(涼子)が、職場での自分、過去の恋愛を背負いながら、待ち合わせの場所に立つ。

亮介の過去の恋愛経験から、ドライでストレートな関係を求める。美緒は仕事に追われ、恋愛経験も少ない、年齢より若い発想の女性。

男性と女性の恋愛に対する温度差や距離感の違いとかが、もどかしさも一緒に伝わる。
東京湾を挟んで見える景色が、2人の姿を表している。

変にロマンティックになりすぎず、美化しすぎてない。
好きなんだから、すべて一緒・・というわけではない・・のが、本当のところなんじゃないかな・・・。

9点
2004.01.05 Monday 14:51 | comments(0) | trackbacks(1) | 
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