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『 64(ロクヨン)』 横山 秀夫 文藝春秋

警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。刑事など一握り。大半は光の当たらない縁の下の仕事です。神の手は持っていない。それでも誇りは持っている。一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。D県警は最大の危機に瀕する。警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある。

久しぶりの横山作品でしたが、やっぱり惹きこまれますね。
大きな組織の中の一人が、どれだけ動かしていけるかというのも見どころですが、そういかない葛藤も見ものです。
過去の事件を何年か経ってから洗い出すとまた見えてくる真実。事件の流れと平行に進む過去と対立と一人一人の人生・生き方。横山さんのリアリティあふれる描き方に引き込まれます。長編なんですが一気に読めるのは、既に読み手側が横山さんの術中にハマってるからでしょう。
この設定も面白いですよね。オススメです。

10点

2013.06.30 Sunday 22:08 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『震度0』 横山秀夫 朝日新聞社

震度0
震度0

阪神大震災のさなか、700km離れたN県警本部の警務課長の不破義人が失踪した。県警の事情に精通し、人望も厚い不破がなぜ姿を消したのか? 本部長の椎野勝巳をはじめ、椎野と敵対するキャリア組の冬木警務部長、準キャリアの堀川警備部長、叩き上げの藤巻刑事部長など、県警幹部の利害と思惑が錯綜する。ホステス殺し、交通違反のもみ消し、四年前の選挙違反事件なども絡まり、解決の糸口がなかなか掴めない……。(amazonより)

横山さん得意の警察ものですが、今回は県警トップクラスの六人が自分の保身と出世のために、権力の拮抗した間柄で攻めぎあいます。
しかし、この物語は阪神大震災当日が舞台となってます。日本中が地震に慄きパニックになっている最中なのに、この県警の内部だけが全く別の空間に居るようです。

…そう、この身勝手で自分のことしか考えられない男達とその妻達…そして唯一真面目で人望も厚かったのが失踪した不破だった。
県警の面子をかけてもこの失態を隠したい…また不破から漏れると困ること、それも防ぎたいと腹の探りあいが始まるのだが。。。

本当に出てくる人すべてが腹黒いというか好きになれない人ばかりでイライラしてきます。この奥さん達も幼稚な描かれ方でウザッたい人たちばかりなんですよね。思考や感覚が麻痺したような、でも閉鎖的な環境に居る人たちの歪みみたいなのが伝わってきます。
また不破の足取りを調べていくうちに、調べている側のボロも出てきてしまったりと実に大人気ない駆け引きの連続です。

そして不破の奥さんが言うのです。
一生懸命役所の為に働いてきたのに、いざとなったら誰も不破を心配してくれない…』と。
これなんですよね。
震災が起ころうが不破が居なくなろうが、家族が病気になろうが…自分しかないのです。

震災とこの物語とつながる部分は殆どありませんが、『槍が降ろうが周りで何が起ころうが自分に直接掛かること意外はまるで見えてないこの人たち』を表現したかったのだと思います。。タイトルは幾つかに掛けてあるのですが上手いと思います。

しかし…本当にいい人が出てきません。実にムカムカするんですよね…それが狙いなんでしょうけど。あと、いわゆるオチの部分が弱いというか、不破がありえない場所に居たこと…なんですよね…。
ここで見事にキメてくれてたらそれまでのドロドロが生きてくるのでは…なんて感じました。(←偉そうに書いてスイマセン…)

8点
2006.09.03 Sunday 21:47 | comments(4) | trackbacks(7) | 

『出口のない海』 横山秀夫 講談社

出口のない海
出口のない海

今回は戦争モノと、新たなジャンルに挑戦…ではなく、著者が1996年にノベルズとして出した旧著を全面改稿したもの。

終戦真近、万が一にも生き残る可能性もない人間魚雷<回天>に乗ることになる主人公。何の為に死ぬのか…理由付けをしたい。そしてまだ夢を追いかけたい。つい一年前には野球をやっていたのだ…。戦艦さえ見たことがないのに戦争をしてきた気分になる。「これは己の心の中の戦争なんだ」戦争に青春時代を翻弄させられる。死のみしか進む道を選べない主人公の葛藤が描かれている。
  
この本を読んで思い出すのが、同時期に出された『僕たちの戦争』荻原浩。同じ回天を扱った、軍事教育がそれほどされてないうちに戦場へ赴く若者達。
「己の心の中の戦争」は両作品に共通する。
タイトル『出口のない海』の意味がとても切なく感じた。

8点


出口のない海―人間魚雷回天特攻作戦の悲劇(ノベルズ)
2004.11.16 Tuesday 17:12 | comments(0) | trackbacks(3) | 

『臨場』 横山秀夫 光文社

臨場
臨場

8編からなる短編連作集。
臨場とは、警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。
辛辣な物言いで一匹狼を貫く倉石。その死体に食らいつくような貪欲かつ鋭利な検視眼ゆえに、彼には「終身検視官」と異名が与えられていた。

臨場にある被害者に残された情報から、事件になるまでの経緯、犯人の動機から被害者の人生までもを確実に見抜く。
倉石の執拗な事実への拘りが、上のものから疎ましがられるが、後輩には「校長」と呼ばれ慕われている。その倉石を他の登場人物がそれぞれの立場で書かれている。
倉石の被害者への人生までを見きる洞察力、というより、そこまで分かってしまうのか(分かろうとするのか)。それは亡くなった人が、今まで生きてきたという最後の終止符はいい加減ではなく事実を見つめる事で、ちゃんと終わらせる。厳しさの中の優しさなのではないかと思う。
「どこにでもあるクソ人生でも、ホトケにとっちゃ、たった一度の人生だったってことだ。手を抜くんじゃねえ。検視で拾えるものは根こそぎ拾ってやれ」
口数が少ない分、発する言葉の意味は重い。

8編どれもイイが、「餞」「十七年蝉」が気に入っている。

8点
2004.07.06 Tuesday 11:13 | comments(0) | trackbacks(1) | 

『看守眼』 横山秀夫 新潮社

看守眼
看守眼

6編の短編集
警察と新聞社を舞台とした話は良かった。
仕事と家庭、職場の上下間など働く男の姿を一気に読ませるなぁ。

「看守眼」
近藤は留置場の看守官。
この春定年退職するのだが、最近一年前に起きた「死体亡き殺人・主婦失踪事件」で証拠不十分として釈放された男を追いかけている・・・。
女性から見てるので、事件としては冷めた目線だけど、近藤の看守(刑事?)の勘で、黙々と追いかける姿や、釈放された男の様子などジワジワ伝わってくる。静かな流れの話だけれど、良かった。

「自伝」
仕事を一つ失い困った時に、只野正幸はある社長の自伝を書き起こす依頼が来た。
そのインタビューの中に大きな事件を犯している事を社長が語り始める・・・。
社長の発言から推測ながら、色々思い描く只野。
困った時にどういう態度を取るのか・・・。
これもとても面白かった。

・・・一編一編面白いし外したものは無い。
「午前五時の侵入者」は横山さんの作品の中では新しい分野の話と思う。
どれも良いからこそ、もっと長編で読みたいな〜と思ってしまうのは我が儘だと思いますが・・・短編では勿体ない・・・。

8点
2004.02.23 Monday 06:10 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『影踏み』 横山秀夫 祥伝社

影踏み
影踏み

真壁は、家人が寝静まっている所に忍び込んで盗みを働く「ノビ師」。
火事で真壁以外、家族が焼死したが、双子の弟は今も真壁の中耳にいる。
窃盗罪で服役からとかれた後、何故自分が捕まったのかを探リ始める。

いつも熱い主人公が多い横山作品だが今回は無口でクールな男が主人公になっている。
短編連作になっているので話が小さくまとまっているような気がするけど、
最後に探していた本当の答えに導いている。

話の盛り上がりに欠けるのが残念だけど、こういう横山作品があってもいいのかもしれない。
あえてテンションが上がり過ぎないように書かれてたのかな。
嫌いではない設定だけど、イマイチ盛り上がりも落ちも薄かったような気がする。

7点
2003.11.22 Saturday 09:09 | comments(0) | trackbacks(1) | 

『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫 文藝春秋

クライマーズ・ハイ
クライマーズ・ハイ

北関新聞の記者・悠木は、安西と衝立岩に登る予定だったが、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落。悠木は登山を中止、全権デスクとして情報の収集を始める。

この大きな事故を地元の新聞記者の部下が取材し、記事にする。ここでも、横山サンの主人公は現場に出ず集まる情報をまとめ、指示していく。この緊迫感が凄く伝わる。
他社とのネタの取り合い、また同じ社内での確執、締切との戦い、載せられない記事の限界〜が次々と描かれていて、読んでいても息つく暇も無い。
事故から怒涛の一週間が新聞記者の目線で書かれている。

横山さんが85年御巣鷹山日航機墜落事故を、上毛新聞記者時代に実際取材した内容はまさに事実で、言葉も重い。
とにかく新聞社内部の話はとてもリアル。スピードス感があって、舞台となる新聞社内部の慌しさをそのまま体験してしまった気になる。

実質一日で読了。良かった。

9点
2003.09.21 Sunday 12:03 | comments(4) | trackbacks(3) | 

『陰の季節』 横山秀夫 文春文庫

陰の季節
陰の季節

表題含む四編の短篇連作集。横山氏のデビュー作。

D県警を舞台にした、現場の警察官では無く管理職にあたる警察内部を暴露するような、今までの警察モノとは違う新鮮な印象の作品。

「陰の季節」
警務課調査官、二渡真治は天下りした警察OBが辞めるのを拒んでいる。何故それほどまでに拒むのか・・・上手くいかない人事異動と上司からの突き上げで、OBの事を調査し始める。
「黒い線」
後に『顔』で主人公となる平野瑞穂が突然の失踪。警務課婦警担当係長、七尾友子が彼女の行方と失踪の理由を探る。

全体としてD県警のそれぞれの課を一編に収め、それぞれにエリート課長(部長)が内部で起こった事件を、内々で捜査するというお互いの腹の内を探るような、そこには警察独特の上下間が浮き彫りになる。
またキーとなる人物が、どの話にも現れ、話の裏で見つめている。

この書き方はその後、別の県警のパターンとして出てくるが、この設定と話のスピードが臨場感が出て、とても引き込まれる。
途中、先が見えるミステリにしては弱い部分もあるような気がするけど、個性的でハッキリした主人公、又は登場人物の勢いに、それもあまり気にならなくなる。

上記でも書いたけど、いわゆる事件を指示する立場の人間が主人公なので、事件をどう捜査していくか・・・という過程が読めるのは珍しいように思う。

既に他の本を読んでいて、この本がラストに読んでしまったのがちょっと惜しかった。
ヤハリ出版順に読めばよかったと(苦笑)

8点
2003.08.25 Monday 13:47 | comments(0) | trackbacks(2) | 

『動機』 横山秀夫 文春文庫

動機
動機

表題含む、4編の短編集。
どれも力強く書かれていて、最後まで読みきるまで心揺さぶられる内容も物ばかりだった。

「動機」
貝瀬が起案した一括保管が裏目に出た。犯人を探す為に貝瀬は、色んな考えを思い浮かべては一人一人を疑いの目で見つめる。
警察独特の上下関係、警察官だった自分の父の事や家族の事など、段々追い詰められていく姿がリアルで息を呑むような描写に嵌ってしまう。

「逆転の夏」
ノザキ典礼搬送に勤める山本は、長かった刑務所暮らしからやっと出所、ようやく定職に落ち着いたころ、一本の電話が掛かる。
 この、罪を犯し刑期を勤め無事出所しても、平穏な生活が待っているわけではない。。。というこの設定は、最近読んだ『手紙』『繋がれた明日』に似ているが、そっくりではない。
 短編なだけ、一気に読ませるスピード感はさすが。

9点
2003.06.22 Sunday 14:40 | comments(2) | trackbacks(3) | 

『真相』 横山秀夫 双葉社

真相
真相

表題含む5編の短編集。
今回は警察モノではなくミステリ色の強い話だった。
どれも一人称で、主人公の周りの人間の疑い、恨み、迷いなど疑心暗鬼で苦しむ様子は臨場感あふれるものだと思う。
「他人の家」
出所した男がその後、周りの不当な中傷に悩み苦しむ、噂はどこまでもついてくるし、刑を全うしても罪からは逃れられない…という『繋がれた明日』に似た設定の話だった。(勿論展開はちがう)
横山サンの新たなジャンルが出てきて楽しめた。ただ、救いの部分がない話ばかりなので、私としては残念だった。
 
7点
2003.06.07 Saturday 14:53 | comments(0) | trackbacks(2) | 
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