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『書店員のネコ日和』  田口 久美子  ポプラ社

 元祖・カリスマ書店員が、出版界全体の現状と今後をイキの良い文章で描き出す。今回は拾った仔猫「ノラコ」とのやりとりを縦軸に。

『書店風雲録』『書店繁盛記』と、書店の裏側を書いた田口さん、新しくオープンする店の手配やお手伝いに奔走する2007年2月、自宅庭にフラリとやって来たノラコとその母猫との出会う。
田口さんの同居するお母様が猫は家に入れちゃダメと外猫としてのお付き合いがスタート。
立ちかわって入ってくる他の猫達、季節と共に変わる猫達の生活環境と、田口さんとお母様の気持ち。ベストではないのかもしれないけど、ありのままに生きる猫達を田口さんの独特の目線で綴られていて面白かったです。
もちろん猫が登場する本なども出てきますし、書いてある事がつい最近の話まであるので、余計にリアルタイムで見てるようです。(もちろんフィクションではないので当たり前なんですけど)

このノラコとの出会いの話と一緒にジュンク堂事件簿も書いてあり、出版業界だったり、書店でのご苦労も見えて新鮮でしたが、営業努力とは別の大変さもあるんだなと思いました。

で、ノラコ…チラリと写真で出てましたが、とってもかわいい三毛ちゃん。今は家猫となってるようです。猫にも人生…一匹一匹にドラマがあるんですよね。うんうん。危険のない家の中でノンビリ暮らしてる事でしょう、よかったよかった。

猫好きの方で書店事情がちょっと知りたい方は是非。
(いるかな?)



2011.11.08 Tuesday 09:17 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『おじさんとおばさん』  平 安寿子  朝日新聞出版

 50歳を過ぎ、今やおじさんとおばさんになった元同級生たちに、いったい何が起きたのか? 懐かしさに気持ちが温かくなる、あの歌、テレビ番組、漫画。そして、新たな恋の行方は…? 『小説トリッパー』連載を単行本化。

ある集まりで同級生6人が40年ぶりに再会すると…。
50歳代といえば、40歳代よりも更に色んな人生を送っているのかが変わってくる。今回は同級生、同い年といえど、独身の者、連れ合いの人に亡くなられた人、シングルマザーになりやんちゃ息子と住むもの、既に孫がいるもの、実家を継いで小学校から同じ場所にいるもの…など様々な人生を送ってきたものが、同級生という軸だけで出会い、付き合いが始まっていくのですが…。

実際に同級生が会ってもこんな事にはならないと思うけど、他の人の人生を羨ましく思ったり、人の人生に巻き込まれてしまう事って言うのはあるのかな。。
旦那や自分の定年や体の不調を感じると焦りを感じることはある。
そのなかで、この物語の登場人物たちは結構相手を思ってるようで、自己中心でワガママだ。しかし、その中で同級生達の頑張りや苦労を見て、自分を見つめなおそうとしている。
物語の中では大人気ないというか短絡的に考える人が多くて面白かったけど。

コミカルに書かれてるけれど、ちょっと辛口。100%共感はしないけど、分かる部分もあって…
…この世代になったら読み返すか…いや、かえって読みづらいかも(笑)

7点

2011.01.24 Monday 10:15 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『人生の使い方』 平 安寿子  日本放送出版協会

この先、夫とべったり一緒だなんて冗談じゃない!? 定年を前にすれ違う夫婦の思惑と、それでも夫婦でいることの意味をユーモラスかつシリアスに描く長編小説。『NHK出版WEBマガジン』連載に加筆訂正して単行本化。

夫50代妻40代、大学生の長男と高3の娘というよくある家族。
子どもに手が掛からなくなったが金は掛かる。そしてそろそろ夫の定年後の事も考え始めた夫婦だったが。
お互い共通する趣味もなく妻は必至に夫にカルチャークラブなどへ行って趣味でも見つけたらどうだと持ちかける。
そんな会話が妻側と夫側の交互の目線で続いていく。まったく考え方の違う二人の話し合いは平行線をだどるばかりなのが…。
そこへ娘の進路変更だったり、兄夫婦の突然の出来事があり、今後の二人のあり方について現実的に考えることになる。
 
この世代が見事ワタクシ世代と同じ、子どもに手が掛からなくなってやっと夫婦の今後を考える時期になると思うのですが、ちょうどその頃を描いていて…ハマってしまいますね。
特に兄夫婦に起こる出来事が身につまされるというか…、一気にリアリティのある話になるんですよね。
 
物語としては妻が明るくて、夫のほうは真面目なようで全然〜なので、この二人の会話はとても面白いです。
 
作家の平さんもこんなこと考えてるのかな…。
面白く読めましたが、考えさせる話でもありました。
 
8点
2011.01.15 Saturday 10:07 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『なんにもうまくいかないわ』 平 安寿子 徳間文庫

 子なしシングルの負け犬も40過ぎたらオオカミだ−。なんでもかんでも己のことを喋ってしまう「私生活の無い女」志津子を中心に、独特の「饒舌体」で一気に読ませるコメディーなどを収録。

40を過ぎて独身のキャリアウーマン。仕事とプライベートの境がなく、なんでも自分の事を隠さず言ってしまう、自分も人も振りまわしてしまう志津子さん、この志津子さんに関わる人達から見た短編連作となっている。
1編目で、同級生の主婦からみた志津子さんとの関係を読んでると、心底嫌いになりそうな彼女…なんだけど、やっぱり憎めない…と思ってしまう(私には合わないが…)
お金はあるけど愛情に飢えてるのか、幸せな感じがしなくて慌しい。
運転が下手なのにベンツに乗ってたり、常に若い男性と居たりと、それなりに幸せな気もするけど、満たされない彼女。
ユーモアを越えてひいてしまうのですが…それでも彼女の積み重ねてきたものが見えたとき、彼女の必死さみたいなのがどうしてかが見えてくる。
ドタバタだけでは終わらないのがミソ。
ちなみにこの志津子さんにはモデルがいるそう。これを書き上げてから数年経ってるけど、その人は今もこんな感じのまま年を重ねてるのだろうか・・・気になる。。

7点
2009.09.02 Wednesday 00:58 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『14歳』  千原 ジュニア  講談社

14歳 (MouRa)
14歳 (MouRa)

もう二度とこの友だちとは遊ばない。遊べない。だけどこのままじゃ僕はつぶされてしまう。僕は僕を守るんだ。悲しい色に塗り替えられてしまう前に。僕の心は僕が色を塗るんだ…。幻の自伝的小説。

ジュニアさんの自伝的小説……となってます。
14歳という年齢の割りに大人びた冷静な部分を持ち、他人も自分も観察をしている感じ。
自分は特別…とは思ってなくて、心の整理が出来ず将来自分がどう進むべきなのか迷い続け、狭い部屋へ引きこもる。
寡黙な父親・怯える母親・遠巻きに見るクラスメートに先生。
もう少し待って欲しい、行く先を見つけるまで〜と思うが、本人の思う方向からはドンドン離れていってしまってる。
心の焦りと揺れが独特の世界で書かれている。

砂あらしの音の中から彼を救ったのはおばあちゃんとたった一人の友達、そして兄。
そのままの彼を受け止めてくれた人達。
そういう人を見つけられたら、自らちゃんと立ち上がれる。

自分に逃げてない引きこもりっていうのもあるんだね。。。

8点
2009.02.01 Sunday 01:11 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『書店風雲録』  田口 久美子 本の雑誌社

書店風雲録
書店風雲録

個性派書店「池袋リブロ」の時代 ベストセラーを売るように大量の思想書を積み、曲線と金属と山型の書棚には世界の突端が。”ひと”と”文化”を武器に、1975年、書店界の風雲児誕生。

ジュンク堂池袋本店副店長の田口さんが「池袋リベロ」の時代の本屋の発展の様子を描いたものです。
先に『書店繁盛記』を読んでしまってるので、コチラを読むととても堅苦しいのだが、それでもその本屋が個性的な面々によって出来上がってくる様子は、本屋としての経営などにも繋がりとても興味深い。
「池袋リベロ」を知ってる人や本屋に勤めていた(バイトしてた)人ならナルホド〜と思える部分もあるでしょうね。
(私は地方だし大型書店も近くにないのでちょっと想像しにくいのですが)

7点
2007.05.10 Thursday 22:35 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『書店繁盛記』 田口 久美子   ポプラ社

書店繁盛記
書店繁盛記

本屋さんの棚には、私たちの未来がつまっている-。書店の店頭で日々奮闘する若い書店員たちの「右往左往」を書きとめた一冊。本屋さんの事件簿、大型書店オープンまでの道のりなど、書店の裏話が満載。

しまった…前作として『書店風雲録』というのが先に出てるそうだ。
順番を間違えたようだが…気にしない(苦笑)

池袋ジュンク堂は敷地面積が一番大きいらしく、並べてある本も入荷数も多い、当然お客さんも多いわけだが、それだけに悩みも沢山あるようだ。
特にアマゾンの話や客注、講演会の話など、随分的を絞って書いてあるけれど、もっと沢山の苦労があるんだろうなぁ〜。この田口さんは、あえて・だろうが、ズバズバ困ってるわ大変よ〜ということを書いている。
本を並べて売れば良いだけ〜ではない、見えない部分の苦労もあるし、トイレに篭るお客さんの話は本屋だけの話じゃないような…。
それにしても本屋さんのプロだなぁ…って感じる。こういう人がいるからこそ、他の書店員さん達の士気も上がるのだろう。
もちろん地方の大型店舗の本屋さんも同じような苦労があるんだろうなぁ。

私は出来るだけ本屋で買えるものは本屋で買う、取り置きするぐらいなら店頭に並ぶまで待つ。CDも基本的には同じ……。
しかしご近所の店には売れセンの本やCDしかないから密林にお世話になってしまうことも多いかな(^^ゞ
2007.05.03 Thursday 00:33 | comments(5) | trackbacks(1) | 

『本を旅する 』 出久根 達郎 河出書房新社

本を旅する
本を旅する

与謝野晶子と誤植、川上眉山と樋口一葉とその妹、有島武郎と親友足助素一、ボースと中村屋相馬夫妻…。『中日新聞』『東京新聞』連載エッセイ「書物浪漫」を一冊に。本の世界をどこまでも遡る234篇の旅。

著者は古書店主ながら、作家として『古本綺譚』で登場。『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞、『佃島ふたり書房』で直木賞を受賞されているお方。。
1ページに1エッセイ。
短い文章に作品への思いだったり出会いだったりと拘りなく日記のように書き留めてある。
懐かしい本が多いけれど(だから内容や面白さに共感することはないが)気に入った本には何度も続けて感想なり作家さんについて書かれてたりする…。
エッセイという感じはしないが古書に囲まれた店内に入り込み店主のつぶやきを聞いているような感じだ。。。
2006.11.07 Tuesday 09:11 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『夜市』 恒川光太郎  角川書店

夜市
夜市

第12回日本ホラー小説大賞受賞。

「夜市」と「風の古道」。
ホラーというほどの怖さはなく、異空間へ迷い込んでしまう。それはとても独特な世界なのに、懐かしさも感じる。
きっと寓話や御伽噺の中に入り込んでしまったような感覚の物語、2編。

「夜市」
幼いころ夜市に迷い込んだ祐司は、何かの引き換えに野球選手の才能を手に入れる。しかしこの才能は本当に欲しかった物なのか、そしてその頃からずっと抱き続けてきた一つの決心。彼女と共に夜市に向う…。
夜市という、お祭りなどの市場のように楽しい雰囲気は全く無く、闇の中の夜市の世界が読み手を惹きつける。すっかりこちらまで迷い込んでしまったかのようで、手を伸ばした先はどうなるのか全く分からない展開にすっかり嵌ってしまった。
夢か夢じゃないのか、現実離れした話をまともに受けとめられてしまう、独特の世界は素晴らしい。

また「風の古道」も似た雰囲気。ホラーが苦手な方でも大丈夫です。

8点
2006.02.11 Saturday 20:46 | comments(2) | trackbacks(10) | 

『サヨナライツカ』 辻仁成 幻冬舎文庫(再読)

サヨナライツカ
サヨナライツカ

永遠の幸福なんてないように 永遠の不幸もない
いつかサヨナラがやってきて、いつかコンニチワがやってくる
人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトとにわかれる
私はきっと愛したことを思い出す


婚約中で結婚式を数か月後に控えた豊はタイへ単身赴任となるが、そこで沓子と運命的な出会いをする。
沓子の魅力に溺れながらも、豊の勤める航空会社の創設者の娘・光子との結婚は無しにはできない。
結婚式までの4ヶ月間愛と葛藤の日々を送る。

1章は若き豊と沓子の4ヶ月間を描いてるが、2章では25年後の三人も描かれている。月日が経って分かる若き日の沓子の想いが切なすぎる。この夢のような4ヶ月があったからこそ残りの人生があった。
分かれてもお互い想い続けることが本当に幸せだったのかどうか…不倫?だけど純愛だった二人の行く末は…切な過ぎる。
婚約当時光子が豊に送った詩「サヨナライツカ」や沓子が豊に宛てた手紙を改めて読むと、心に深く突き刺さります。
2005.11.06 Sunday 20:48 | comments(0) | trackbacks(1) | 
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