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『バイバイ、ブラックバード 』 伊坂 幸太郎   双葉社

 太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。50名限定で、郵便で届けられた「ゆうびん小説」に書き下ろしを加えて書籍化。

「理不尽なお別れはやり切れません。でも、それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」


6章からなる短編連作。
5股掛けていた星野君は、借金苦となり、行き先の分からない「あのバス」に乗せられてしまう。その前に、今まで付き合ってきた女性に別れを伝えに行くという。
その星野が逃げ出さないようにと見張り役として巨漢の毒舌女性・繭美がついてきます。そして女性に会うたびに、更に星野君の優しさと優柔不断さにマツコ…いや繭美のツッコミ。
別れも告げるのも告げられる方も結果やさしくバイバイとなるのですが、それぞれのミニストーリーはほのぼのしているものの、「あのバス」の正体との行方は分からないまま。
それは前半暗くあるものの、だんだん忘れさせるぐらい実はそんなにやばくないのかも…とも思わせますが、やはり「あのバス」に乗る日が迫るうちに、見えない怖さを感じさせます。

「あのバスは」、星野君のその後は…かなり気持ちをモヤモヤ・揺さぶられたまま。

久しぶりに伊坂さんの作品を読みましたが、これも伊坂ワールドなんですよね。…想像力豊かな人ほど深く感じられるかも。

9点
2011.04.14 Thursday 01:31 | comments(0) | trackbacks(1) | 

『フィッシュストーリー』  伊坂 幸太郎  新潮社

フィッシュストーリー
フィッシュストーリー

あの作品に登場した脇役達の日常は? 人気の高い「あの人」が、今度は主役に! デビュー第1短編から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。

4編の短編集なのですが、映画で言うとスピンオフのような感じかしら(ちょっと違うか(^^ゞ)。
伊坂作品には魅力的なキャラクターが沢山いるのですが、その人達にもスポットライトを当てた作品集です。

……ということは、全然思い浮かばず、どの人がリンクしてるのかな〜なんて思って読んでましたが…結構出てましたね(読み終わってから気付く)。
勿論知らなくても読めるのですが、知らないと物足りなさを感じてしまいます(満足度70%ぐらい)。けど繋がりが分かると満足度120%(笑)。
もう一度読み返したくなります。

「動物園のエンジン」
夜の動物園で寝そべる男、それを見る男達がその男について会話だけでその理由と素性を知ろうとするのだが、この思いつきの会話にまんまと思考を振り回される。
「ポテチ」
空き巣の常習犯に見覚えがあったのだが…こんなところに居たのか(笑)
留守番電話を取ってしまう所から始まるのだが、このメンバーならでこその展開なのかな?

『ラッシュライフ』や『重力ピエロ』が特に印象に残ってる私にはこの2篇が特に楽しめたかな。
何年経っても変わらない人達です(笑)

この本が初読みの方は、これから読む初期の作品が登場人物の過去を探る旅になることでしょう、羨ましい。
物語は少々軽めですが、軽く読めないのが伊坂作品です。

8点

伊坂幸太郎ファンサイト
2008.05.13 Tuesday 11:20 | comments(0) | trackbacks(0) | 

『終末のフール』 伊坂幸太郎 集英社

終末のフール
終末のフール

   あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。

2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか?

8編の短編連作になっていて、ヒルズタウン仙台に今だ住み続ける人の終末への思いが描かれている。
非現実な事が起こると予告され逃げられない情況におかれたが、目に見えるものではない。だからこそ恐怖が膨れ上がる……のだが。。

これまでにも小説や映画で似たような話はあるけど、実際小惑星が落ちてくるのは3年後という、考えるには充分すぎるほどの時間。このときどういう気持ちで終末を迎えるのか〜〜という設定は面白い。
当然パニックになるのだが、主人公に置かれる人たちは、また違う行動をとるのだ。
『太陽のシール』『冬眠のガール』『天体のヨール』に深刻さはあんまり感じられませんが生きようとする前向きな所が良いですね。
反対に『篭城のビール』『演劇のオール』そして『深海のポール』は終末さが出てます。。

…読んでいくとどうも危機感が薄いような…と感じてしまいますが、5年も緊張感は続かないでしょうね。パニクって慌てて、でもどうしようもない…と分かって。
それからの物語です。

9点

公式HPで創作秘話を探そう。
インタビュー
2006.06.20 Tuesday 21:29 | comments(8) | trackbacks(19) | 

『砂漠』 伊坂幸太郎  実業之日本社

砂漠
砂漠

大学入学と共に主人公北村が鳥井、西嶋、東堂、南と出会い過ごす4年間、細かい出来事は書かれてないけど、主だった出来事だけ振り返っている。
名前が北が付くだけで麻雀のメンバーに誘われたり、南という女性は特殊な力を持っている〜だなんて普通の日常からチョット外れた大学生活。クールな北村が目立つ西嶋と鳥井と一緒に居る間に徐々に仲間たちと繋がっていく。
登場人物達一人一人が個性的でしっかり描かれているのが、この作品に惹き込まれる一つの要素。どの人も人物がキッチリ出来上がっていて素敵過ぎ。青春モノながらミステリーの要素もあって、実にドタバタ、濃い4年間の大学生活が描かれていた。

ラストのくだりはよかったです。
久しぶりに読み終わるのが惜しい!と思える話でした。

9点
2006.03.30 Thursday 01:18 | comments(8) | trackbacks(17) | 

『死神の精度』 伊坂幸太郎 文藝春秋

死神の精度
死神の精度

死神が主人公という6編の連作短編集。

対象となった人物の死の審査を「可」か「見送り」かを見極めるため、その対象人物ごとに人物設定を変えながらその人物に近づく死神…。
容姿は変えるのに何故か名前はいつも千葉。特に人間の生死にも生き方にも興味は無いが、これも生死を判断する為の仕事としてやるだけ。簡単に「可」を出すのは簡単だ。しかしその辺はキッチリ最後の一週間は見ておきたいタイプ…それは大好きなミュージックを聴きたいだけかもしれないが。
強烈な個性のある主人公は実にクールとして、淡々と任務をこなす。相手に話を合わすことも良く知っている。ちょっと無愛想だけど憎めないサラリーマンのような死神と対象者が過ごす7日間…。
確実にある人間の『死』を前に死神は『生』とも向き合う。
「吹雪に死神」
吹雪で閉ざされた別荘の中にその対象者がいるのだが、この別荘の中で対象者以外もなくなってしまう。死神本人は淡々としているが、状況は本格ミステリの登場人物並にいつのまにか事件に巻き込まれている。
・・・かと思えば、
「恋愛で死神」では対象者と片想いの女性についてよく話すことになり、また「旅路を死神」では青年とロードムービーのように旅に出る。
そして「死神対老女」では、あっさり死神を見抜かれる。
実に色んなシーンに死神アリなのである。

死神と過ごす数日間の対象者は不幸のどん底に落とされるのだろうか。
最後に死神が判断する「可」と「見送り」。その判断が正しいかどうかなんて関係ない。死ぬまでどう生きるかが重要な気がする。
伊坂さんがそんなメッセージを託しているかどうかは分からない。
が、私はそんな風に受け止めた。

9点

WEBダ・ヴィンチ・今月のプラチナ本
2005.08.10 Wednesday 17:31 | comments(4) | trackbacks(10) | 

『グラスホッパー』 伊坂幸太郎 角川書店

グラスホッパー
グラスホッパー

鈴木の妻はある会社社長の息子に車で轢かれ亡くなってしまう。教師をやめ、その息子に復讐する為に入ったが、今度はその息子が轢かれるのを、しかも誰かが車の前で押したのを目撃してしまった。「押し屋」と呼ばれるその人を追いかけるうちに大きな事件の渦に巻き込まれていく…。


元教師の「鈴木」、依頼された相手を確実に自殺に導く「鯨」、女子ども相手でもサクッとナイフで片付ける若いおしゃべりな「蝉」の面識のない3人が、社長の息子の死と「押し屋」と呼ばれる男をキーワードにプロの殺し屋と呼ばれる同業者同士(鈴木を除く(笑))が段々集結…??
同業者が集まるとどうなるのか…これは楽しめた。唯一素人の鈴木の行く末は何処へ流れていってしまうのか。

伊坂さんのパズルが合わさるような話の展開を今回も楽しめた。
…が、伊坂さん流作品同士のリンクが分からなかった。。ということは、まだ未読の本と繋がってるのだろうか??
やはり、他の作品も読んだ方が、新たな楽しみ方ができるようだ。

8点
2004.09.06 Monday 20:22 | comments(0) | trackbacks(5) | 

『チルドレン』 伊坂幸太郎 講談社

チルドレン
チルドレン

表題含む5編の(一応)短編集。
陣内を中心とした鴨居、武藤、優子、永瀬達からの視点で書かれた短編集といったところなんだろうか。とても面白かった。
陣内という人物に驚かされたりはするが、巻き込まれていくのではなく、あくまで陣内は名脇役として存在している。その部分がとても面白いのだ。

「バンク」閉店前の銀行で銀行強盗にあう。その人質として鴨居・陣内・永瀬が知り合うことになるのだが…。緊迫した場面なのに、アッサリしてしまってるが、燃えてるのか空回りしてるのか、ツカミはOKぐらいの個性を発揮してくれてる陣内には。(笑 

「チルドレン」家裁調査官の武藤は、新聞で前に受け持った子どもが誘拐されていることを知る・・・。「これを読ませるように」と同じ職場の陣内に借りた本には意外なものが挟んであった。確かに陣内の真似は出来ない・・・
展開が次々変わってくのに、武藤の真面目で素直な青年が緩やかに、そして陣内や少年に刺激されながら成長するのがとても面白かった。


「バンク」から「イン」まで随分時間が流れて進んでます。
この時間の流れにある日常の一部分に、それぞれの短編の主人公の後ろ陣内が居ます。
みんなの写真に写ってるけど、センターに居ない・・・みたいな。

『インザプール』と『ニシノユキヒコの恋と冒険』を足して伊坂流にしたような・・・(返って分からない例え・・・爆)
いつものパズル的要素もあり個性キャラあり、伊坂さんらしくないようで伊坂さんらしさが良く出てる作品で面白かった。

>9点
2004.06.27 Sunday 22:27 | comments(0) | trackbacks(3) | 

『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 東京創元社

アヒルと鴨のコインロッカー
アヒルと鴨のコインロッカー

大学に通うために引っ越してきた椎名は、同じアパートに住む河崎に初対面なのに本屋を襲う計画を持ちかけられた。

現在、つまり椎名のいる現在と、二年前の話が交互に流れていて登場人物だけが微妙にリンクしている。
この二つの話が段々繋がっていくのは、読んでいてとても楽しいし、こう繋がるのか〜と感心したり・・・『ラッシュライフ』の時も思ったけどパズル的な面白さがある。(まだ未読の方は、読み落としのないように〜)

内容に関しては、あまり書けないけど、二年前の河崎と琴美とブータン人の留学生の会話に無駄がなく、すべてラストに合わさってくる。
現在の椎名がどう感じるか・・・テーマとしては暗く、河崎たちの優しさがこういう結果になるとは。。

タイトルの由来も最後の最後で分かる。
最後までドキドキさせられた。。

9点
2003.12.03 Wednesday 08:55 | comments(2) | trackbacks(9) | 

『ラッシュライフ』 伊坂幸太郎 新潮社

ラッシュライフ
ラッシュライフ

金がすべてという大富豪と画家、プロの泥棒、交換殺人を計画する男女、急なリストラにあった男性と老犬、父の死を機にある男性を崇拝するようになった若い男・・・という、それぞれ最悪の場面を向かえている5つのシーン・・・とそれぞれの話が、ある場所を中心として話が進む。

最初まったく別の話が並ぶのだが、適度な長さ、場面が変わるときに小さくイラストが入っていて、話を混乱させる事もなく、リズム良く進む。やがてニアミスしたり、すれ違いながら話は一つの輪のように繋がる。
一つ一つの話も内容的にはシンプルだけど面白く、ミステリとしても面白い。
またそのシンプルな話が実は複雑な繋がりを持っていた。。というのがとても良かった。

サクサク読める文章とは別にウムと思わせる内容のギャップに驚く。。という感じかな?
タイトルの意味、深いです・・。

8点
2003.08.08 Friday 13:57 | comments(4) | trackbacks(14) | 

『重力ピエロ』 伊坂幸太郎  新潮社

重力ピエロ
重力ピエロ

 ある日私の勤める会社に春が「放火に気をつけろ」と連絡をしてくる。。春に放火犯を見付けようと話を持ちかけられ、泉水も段々事件に巻き込まれていくが…。
落ち着いた兄・泉水(主人公)と、容姿も行動も少し目立つ弟・春の兄弟、美人だった母、今、癌で入院している父、と訳有りな親子関係を、昔を思い出しながら話が進んでいく。

親子共々色んな拘りを持ちながら過ごしてきた時間、その拘りは家族を守るために貫いてきたのではと思う。兄弟愛、親子愛など会話からヒシヒシと伝わってくる。特に父親の言葉はすべてを救う。

最後に、すべての会話がきれいに繋がる話の流れは、良かった。
父親の台詞といい、家族ものといい…見事に私のストライクゾーンに来た作品だった。

9点
2003.05.18 Sunday 13:55 | comments(0) | trackbacks(4) | 
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