優しい子よ
大崎さんの運命的な出会い4編…といった感じでしょうか。
人前で読まないほうがいいと思います〜(^^ゞ
「優しい子よ」
大崎さんの奥さんは元有名美人プロ棋士、その奥さんがまだプロ棋士だけれど、このままプロで居続けるか悩んでいたところに、ある難病に冒された少年からのファンレターが届く…そこからわずか数ヶ月間の少年と奥さん、そして少年家族とのやりとりが綴られている。自分の死が真近に迫っているのに、奥さんの足を気遣い、がんばります、お友達で居てくださいと必死に手紙を書いて送ってくる…。この少年の拙いけれど強く訴えてくるもの…そして優しさがつまった文章に、心打たれ涙無くしては読めない。お互い会えずにいたけれど気持ちが通じるもの。そして少年が残したものは、奥さんにも大崎さんにもずっと残るものだった。
「テレビの虚構」「故郷」は連作となっていて、『聖(さとし)の青春 』がきっかけでTVプロデューサーと出会う。そのプロデューサーが亡くなった。彼の生い立ちを調べるうちにゆかりに人に次々と出会うことになる…幾つもの偶然と出会いが重なり、彼の生き様は名演出した物語のようだった。大崎さんが長野で見た風景は大崎さんの記憶の一部にずっと残るのだろう。
〜〜と、この3編は『聖(さとし)の青春』という一冊の本が結びつけた、必然ではないかと思う人との出会い。これは大崎さんが大いに影響を受けた話だが、「誕生」は「優しい子よ」の後の大崎さんと奥さんとの話。この話は一番エッセイっぽいですね。小説でもノンフィクションでもクールで静かな大崎さんが戸惑いながら二人三脚で赤ちゃん誕生まですごす日々が描かれてます。与えられた命を大切に…十分に分かった上での妊娠は神様がちゃんと時期を見計らってくれてるんでしょうか。
私小説でもあるこの本を読むと感動する部分もあるのですが、どうも文章が美しすぎて美化してるように見えてしまうのが残念です。もちろん大崎さんの文章の美しさは私も好きなのですが、リアルな世界を小説そのままの表現ではちょっと勘違いされそうですね。
>8点
本やタウン 創作の現場